台風が発生する仕組みや前兆
このページでは
台風が起こる仕組みと
台風が原因で発生する恐れのある被害について
説明します。
台風からの避難と備えについては
こちらのページを御覧ください。
台風の発生状況
気象庁から台風の発生状況が発表されています。
(1981年から2010年の30年間の平均)
年間の平均として
・発生する台風 26個
・日本に接近する台風 11個
・日本に上陸する台風 3個
接近・上陸が多い傾向があります。
台風が発生する仕組み
台風は熱帯地方の高い海水温のところで発生します。
メカニズムは以下の通りです。
1) 熱帯地方の海域では太陽の強い日射により海水温が高くなる。
2) 海上で上昇気流が発生、大量の水蒸気が反時計回りに渦を巻きながら上空に昇っていく。
3) 水蒸気を含んだ下層の空気が上空で集まり、多数の積乱雲が発生。
4) 積乱雲が集まり渦が大きくなると熱帯低気圧となる。
5) さらに発達すると台風になる。
・北西太平洋に存在する熱帯低気圧
・最大風速が毎秒17メートル以上
のものをいいます。
台風の前兆
現在、気象衛星を利用した台風の観測技術が優れているため
特に前兆を知らずともテレビやラジオ、ネットの情報で
かなり細かな台風の状況を知ることが出来るようになりました。
台風が近づくと雨風が強くなるのも前兆のひとつですが
台風の前には水蒸気が多くなる傾向があるので
波長の長い赤色の光が目に届きやすくなるため
鮮やかな夕焼けになりやすいようです。
気を付けたいこと
台風の前兆は情報により知ることが出来るようになりましたが
台風がもたらす災害の前兆に気づくことも大切です。
例えば、雨が多い台風の場合
自分のいる地域では雨が少なくても
上流で大雨になったために川が氾濫して
水害や土砂災害に襲われてしまう場合もあります。
例)土砂災害の前兆として、
山鳴りがする、斜面から水が吹き出すなど
台風が原因で発生する災害については
各々のページをご参照ください。
台風の特徴や起こりうる被害
台風の特徴
日本に近づく台風
夏〜秋に発生する台風は熱帯地方で発生した後
偏西風に乗って北東に向かって進むことで日本に近づきます。
台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸に達した場合
台風が上陸したといいます。
夏の季節など、日本列島が太平洋高気圧におおわれているときは
偏西風が弱いため、秋の台風に比べ進みが遅く
複雑な動きをしたり、避けて進んでいく特徴があります。
台風の構造
台風は回転する巨大な空気の渦巻きです。
下層では、反時計回りに中心に向かって空気が吹き込みながら上昇し
上層で時計回りに噴出します。
台風の高さは発達したもので約15kmです。
台風の眼
台風の眼にあたる部分では下降気流がみられ
雲がなく風雨も弱くなります。
台風の目に入ったときでも
急に天候が回復しますので
台風が通過したと勘違いしないように注意しましょう。
台風の眼の直径はおよそ20~200kmです。
なお、一般的には
台風の眼が小さく明瞭になるほど
台風の勢力は強くなります。
(気象衛星の雲の画像にくっきりとした目が現れたりします。)
アイウォール
台風の眼の周囲は
非常に発達した積乱雲が壁のように取り巻き
猛烈な暴風雨となっています。
これをアイウォールといいます。
スパイラルバンド
アイウォールのすぐ外側は激しい雨が連続的に降ります。
これをスパイラルバンド(内側降雨帯)といいます。
スパイラルバンドの外側には
断続的に激しいにわか雨や雷雨が発生します。
また、竜巻を発生させることもあります。
これをアウターバンド(外側降雨帯)といいます。
雲の頂上
時計回りに空気が発散されます。
台風の強さと大きさ
大きさ
台風の大きさは、強風域の半径で決まります。
大型 :500km以上800km未満(大きい)
超大型:800km以上 (非常に大きい)
強さ
台風の強さは、最大風速で決まります。
強い :33m/s以上~44m/s未満
非常に強い:44m/s以上~54m/s未満
猛烈な :54m/s以上
雨の強さと降り方
台風による雨の発生は注意が必要です。
台風の圏内はもちろんですが
台風から離れた場所でも大雨が発生する可能性があります。
これは、前線や気圧配置等の状況によって
台風の影響を受けてしまうためです。
雨の状況に応じて段階的に注意報や警報などが発表されます。
大雨注意報
・大雨により災害の起こるおそれがあると予想したときに発表されます。
大雨警報(土砂災害)
・大雨により重大な災害の起こるおそれがあると予想したときに発表されます。
土砂災害警戒情報
・大雨警報が発表されている状況で、大雨による土砂災害のおそれが高まったときに発表されます。
大雨特別警報(土砂災害)
・重大な土砂災害が発生するおそれが著しく高まったときに発表されます。
気象庁の資料から雨の強さと降り方を抜粋します。
やや強い雨
1時間雨量(mm):10以上~20未満
・ザーザーと降る
・地面からの跳ね返りで足元がぬれる
・雨の音で話し声が良く聞き取れない
・地面一面に水たまりができる
強い雨
1時間雨量(mm):20以上~30未満
・どしゃ降り
・傘をさしていてもぬれる
・寝ている人の半数くらいが雨に気がつく
・地面一面に水たまりができる
・ワイパーを速くしても見づらい
激しい雨
1時間雨量(mm):30以上~50未満
・バケツをひっくり返したように降る
・傘をさしていてもぬれる
・寝ている人の半数くらいが雨に気がつく
・道路が川のようになる
・高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなる
(ハイドロプレーニング現象)
非常に激しい雨
1時間雨量(mm):50以上~80未満
・滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)
・傘は全く役に立たなくなる
・寝ている人の半数くらいが雨に気がつく
・水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる
・車の運転は危険
猛烈な雨
1時間雨量(mm):80以上~
・息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる
・傘は全く役に立たなくなる
・寝ている人の半数くらいが雨に気がつく
・水しぶきであたり一面が白っぽくなり、視界が悪くなる
・車の運転は危険
詳細の資料は
気象庁 リーフレット「雨と風(雨と風の階級表)」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/amekaze/amekaze.pdf
を御覧ください。
風の強さと吹き方
台風による風の発生は注意が必要です。
一般的に、台風の進行方向の右側では
台風本体の風と台風の周りの風が同じ方向に吹くため
風が強くなる傾向があります。
天気図では、台風の強風域と暴風域が表示されます。
強風域とは、主に平均風速が毎秒15メートル以上の領域のことで
暴風域とは、平均風速が毎秒25メートル以上の領域のことをいいます。
気象庁の資料から風の強さと吹き方を抜粋します。
やや強い風
瞬間風速(m/s):20
平均風速(m/s):10以上 15未満
おおよその時速 :~50km
速さのめやす :一般道路の自動車
・風に向かって歩きにくくなる。
・傘がさせない。
・樹木全体や電線が揺れ始める。
・道路の吹流しの角度が水平になる。
・高速運転中では横風に流される感覚を受ける。
・樋(とい)が揺れ始める。
強い風
瞬間風速(m/s):20〜30
平均風速(m/s):15以上 20未満
おおよその時速 :~70km
速さのめやす :一般道路や高速道路の自動車
・風に向かって歩きにくくなる。
・転倒する人も出る。
・高所での作業はきわめて危険。
・電線が鳴り始め、看板やトタン板が外れ始める。
・高速運転中では横風に流される感覚が大きくなる。
・屋根瓦・屋根葺材が剥がれはじめ、雨戸やシャッターが揺れる。
非常に強い風
瞬間風速(m/s):30
平均風速(m/s):20以上 25未満
おおよその時速 :~90km
速さのめやす :高速道路の自動車
・何かにつかまっていないと立っていられない。
・飛来物によって負傷するおそれがある。
・細い木の幹が折れたり、根の張っていない木が倒れ始める。
・看板が落下・飛散、道路標識が傾く。
・通常の速度で運転するのが困難になる。
・屋根瓦・屋根葺材が飛散するものがある。
・固定されていないプレハブ小屋が移動、転倒する。
・ビニールハウスのフィルムがに破れる。
瞬間風速(m/s):40
平均風速(m/s):25以上 30未満
おおよその時速 :~110km
速さのめやす :高速道路の自動車、特急電車
(上記に加えて)
・屋外での行動は極めて危険。
・走行中のトラックが横転する。
・固定の不十分な金属屋根の葺材がめくれる。
・養生の不十分な仮設足場が崩落する。
猛烈な風
瞬間風速(m/s):40〜50
平均風速(m/s):30以上 35未満
平均風速(m/s):~125km
速さのめやす :特急電車
・屋外での行動は極めて危険。
・細い木の幹が折れたり、根の張っていない木が倒れ始める。
・走行中のトラックが横転する。
・ブロック壁で倒壊するものがある。
・固定の不十分な金属屋根の葺材がめくれる。
・養生の不十分な仮設足場が崩落する。
瞬間風速(m/s):50〜60
平均風速(m/s):35以上 40未満
おおよその時速 :~140km
速さのめやす :特急電車
(上記に加えて)
・多くの樹木が倒れ、電柱や街灯で倒れるものがある。
・外装材が広範囲にわたって飛散し下地材が露出するものがある。
瞬間風速(m/s):60〜
平均風速(m/s):40以上
おおよその時速 :140km~
速さのめやす :特急電車
(上記に加えて)
・住家で倒壊するものがある。
・鉄骨構造物で変形するものがある。
詳細の資料は
気象庁 リーフレット「雨と風(雨と風の階級表)」
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/books/amekaze/amekaze.pdf
を御覧ください。
台風による被害
台風の暴風や大雨は、
風災や水災、土砂災害といった深刻な被害を与えます。
住んでいる場所の地質や地形によって
被害の内容や規模が変わりますので注意が必要です。
水害
河川氾濫
河川氾濫とは
大量の雨水が川に流れ込み河川の水位が上昇し
堤防や川岸を越えてあふれ出すことを
河川氾濫といいます。
河川氾濫の特徴
大量の水が速い速度で一気に市街地へ流れ込み
家の中まで水が入ってきます。
家の中のものや、家そのもの、自動車等が
流されてしまう恐れがあります。
流されたものにぶつかったりする可能性もあります。
急な増水によって、川の中州に取り残されることも考えられます。
河川氾濫の兆候
・住んでいる地域で豪雨や長雨が続いている
・近隣の川の上流で豪雨や長雨が続いている
・「洪水注意報」や「洪水警報」「指定河川洪水予報」が出る
兆候を感じたら、川や用水路の様子を見に行かないようにしましょう。
高潮
高潮とは
発達した低気圧の通過の影響で
潮位が上昇する現象を高潮(吸い上げ効果)といいます。
また、強い風が海側から陸側へと吹いたとき
海水は風によって海岸の方へと吹き寄せられて
高潮(吹き寄せ効果)が発生することもあります。
高潮の特徴
高潮は、潮位が急激に上昇することがあります。
波が堤防を乗り越えて陸地に入り込んでくることがあり
低地における浸水被害が急速に広まる恐れがあります。
河川氾濫と同様に
家の中のものや、家そのもの、自動車等が
流されてしまう恐れがあります。
流されたものにぶつかったりする可能性もあります。
高潮は広い範囲で海岸線から一斉に海水が流れ込むため
河川氾濫よりも被害が大きくなる可能性があります。
高潮の兆候
・台風が上陸する場所に住んでいる
・「高潮注意報」や「高潮警報」「高潮特別警報」が出る
内水氾濫
内水氾濫とは
市街地などに短時間で局地的な大雨が降ることで
下水道や排水路が水をさばききれなくなり
溢れだした雨水が建物や土地、道路などを水浸しにすることがあります。
これを内水氾濫といいます。
内水氾濫の特徴
・降雨から浸水被害が発生するまでの時間が短い。
・河川から離れた地域でも浸水被害が発生する。
・通常、内水氾濫のときの浸水深は浅いので
無理に屋外へ避難するよりも頑丈な建物の2階以上へ移動したほうが
安全な場合が多い。
・地下空間や周辺に比べて低い場所においては
局所的に浸水の危険度が高くなるので注意!
早めの上の階に避難しましょう。
内水氾濫の兆候
記録的短時間大雨情報が発表されるような
雨量が多い場合は、内水氾濫が起こりやすい状態です。
土砂災害
豪雨や長雨により、土砂に大量の水が混じり合い
土砂災害が発生する恐れがあります。
土砂災害の予兆を感じたら
速やかにその場所から離れるようにしましょう。
なお、土砂災害の危険がある地区には指定がされています。
・「土砂災害危険箇所」
「土石流危険渓流」
「急傾斜地崩壊箇所(がけ崩れ危険箇所)」
「地すべり危険箇所」
・「土砂災害警戒区域」
・「土砂災害特別警戒区域」
※土砂災害ハザードマップを確認しておきましょう。
崖崩れ
崖崩れとは
山の斜面や自然の急傾斜の崖、人工的な造成による斜面が
雨水の浸透などの影響によって
突然崩れ落ちる現象を崖崩れといいます。
崖崩れの特徴
崖崩れは、突然発生し、崩れるスピードが速く
崩れた土砂は、斜面の高さの2~3倍も離れた距離まで
届く可能性があります。
崖崩れの兆候
崖崩れの兆候には以下のような現象があります。
・斜面から水が湧き出す
・斜面から音がする
・斜面から何かが落ちてくる
地すべり
地すべりとは
比較的緩やかな斜面が
大量の雨量が地下水に影響することで
斜面下方へ移動する現象を地すべりといいます。
地すべりの特徴
斜面の表面部分だけが崩れ落ちる現象を表層崩壊、
表面部分だけでなく深層の地盤までもが崩れ落ちる現象を深層崩壊といいます。
一度に広範囲が動くため、大きな被害を及ぼします。
地すべりの兆候
地すべりの兆候には以下のような現象があります。
・木が傾く
・木の根が切れる音がする
・地面に亀裂や段差が生じる
・地面が揺れる
・地鳴り山鳴りがする
土石流
土石流とは
大量の雨の影響で、山腹や川底の石、土砂が一気に下流へと押し流される現象を土石流といいます。
土石流の特徴
規模にもよりますが、
時速20~40kmという速度で、破壊力がとても大きいです。
土石流の兆候
土石流の兆候には以下のような現象があります。
・流れる水が異常に濁っている
・流木が流れてくる
・地鳴りや土臭い臭いがする
・渓流の水位が急に減少する
強風被害
台風の接近に伴って強風が吹きはじめ
建築物やインフラに被害を与えたり
停電の原因となったりして
社会的機能のまひを引き起こします。
建築物に対する被害
強風は、建築物に対して様々な被害を与えます。
・看板や瓦を飛ばす
・飛来物によるガラス窓等の破壊
・建物の倒壊
・ビニールハウスの破壊
インフラに与える被害
・送電線や送電施設の破壊
・停電が発生する
・自動車や列車などが転覆
以上が、台風が起こる仕組みと
台風が原因で発生する恐れのある被害の説明でした。
さて、これらの知識を前提にして
台風からの避難と備えについて
考えてみましょう。